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どんなことから、今の図解思考に行きついたのか、思い出話を踏まえて書いていこうと思います。

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0051新規事業の立上げに、優秀社員を当てると  

【今回のテーマ】
新規事業の立上げに、優秀社員を当てると.
というお話です。

新規事業を立ち上げたい。
でも、誰に任せればいいのか分からない。

そんな悩みを抱えている経営者の方は、きっと少なくないと思います。

「今いる社員の中から選ぶべきか」
「少し手が空いている人に任せるべきか」
「本業で成果が出にくくなった社員に、新しい役割を与えるべきか」
「それとも、外から新しい人を採用するべきか」

この判断は、本当に難しいです。

なぜなら、新規事業は会社の未来に関わるだけでなく、任される社員の人生にも関わってくるからです。

今日は、私自身がある物販会社の社長さんとの仕事を通じて学んだ、
新規事業の立ち上げに誰を当てるべきかという話をしてみたいと思います。

結論から言うと、
「現業で優秀社員だから新規事業に向いている」とは限らない
ということです。

これ、頭では分かっていても、実際の現場ではつい間違えてしまうんですよね。

1.うまくいっている会社が、新しい事業を考えた話


ある若者向け商品の輸入販売をしている会社の社長さんから、相談を受けたことがありました。

その会社は、今扱っている商品の販売がうまくいっていました。
売上もあり、現場もよく回っている。
社長さんとしては、次の成長の柱を作りたいと考えていました。

そこで、別系統の商品を扱う新しい事業を立ち上げよう、という話になりました。

まずは、その商品の特徴を整理するところから始めよう。
 ・誰の役に立つのか
 ・どんな場面で使われるのか
 ・どのような価値を提供できるのか
 ・既存事業との違いは何か
 ・どうすれば事業として成立するのか
こうしたことを一つひとつ考えながら、事業化の可能性を探っていくことになりました。

そこで社長さんは、社内で実績を上げている優秀な社員を担当者に選びました。

社長さんと、その優秀社員と、私。
この3人で新規事業を考えていこう、という体制です。

一見すると、とても自然な判断です。

本業で成果を出している社員。
周囲からの信頼もある社員。
現場をよく知っている社員。

「この人なら任せられる」と思うのは、当然のことです。

そして本人も、最初はとても喜んでいました。

社長から選ばれた。
自分の頑張りを認めてもらえた。
新しい仕事を任された。

それは、社員にとっても誇らしいことだったと思います。

2.ところが、企画が進まない


ところが、実際に事業企画を分担して進めていくと、少しずつ問題が見えてきました。

彼の担当部分が、なかなか進まないのです。

サボっているわけではありません。
やる気がないわけでもありません。
むしろ、真面目に考えていました。

でも、新しい事業を立ち上げるための企画が、なかなかまとまらないのです。
 「この商品は誰に売るべきか」
 「どういう価値を打ち出すべきか」
 「どの市場を狙うべきか」
 「どういう販売導線を作るべきか」
こうした問いに対して、なかなか答えが出てきません。
それまでの経験を活かせる部分もたくさんあるのですが..

まあ、新規事業というのは、最初から答えが見えている仕事ではありません。
むしろ、答えのないところに仮説を立てていく仕事です。

既存事業のように、すでに流れがあり、役割があり、やるべきことが明確な仕事とは違います。
だから、考えても考えても、前に進んでいる実感が持ちにくいのです。

そんな中で、元の仕事の部下だった人から応援要請が来ました。
 「ちょっと困っているので、見てもらえませんか」
 「この件だけ、判断してもらえませんか」
 「お客様対応でトラブルが出ています」

彼は、その元の仕事ではバリバリ成果を出していた人です。
現場の状況も分かっている。
関係者への指示もできる。
トラブル対応も早い。

だから、頼られるとすぐに動けます。

そして実際に動くと、問題が解決します。
周囲から感謝されます。
自分でも「役に立っている」という実感があります。

当然、やりがいもあります。
充実感もあります。

一方で、新規事業の方はどうでしょうか。

時間をかけて考えても、なかなか形にならない。
成果が見えない。
正解かどうかも分からない。
誰かに感謝される場面もまだ少ない。

そうなると、つい元の職場の仕事に手を出してしまいます。

はじめは少しだけのつもりです。
でも、気づけば時間の大半を、元の仕事に使うようになっていました。

これ、本人が悪いという話ではないんですよね。

3.優秀社員ほど、元の仕事に引き戻される・戻りたい..


ここで大事なのは、優秀な人ほど、元の仕事に引き戻されやすいということです。

なぜなら、優秀だから頼られるからです。

現場からすれば、困ったときにすぐ解決してくれる人が近くにいる。
それなら、頼りたくなります。

 「あの人に聞けば早い」
 「あの人が出てくれば丸く収まる」
 「あの人なら分かってくれる」

そう思われている人ほど、新しい仕事に集中するのが難しくなります。

しかも、本人にとっても元の仕事は得意分野です。

何をすればいいか分かる。
誰に何を言えばいいか分かる。
どう動けば成果が出るか分かる。

これは、とても気持ちがいい仕事です。

一方、新規事業は分からないことだらけです。
考えても、すぐには答えが出ません。
成果も見えにくいです。
評価されるまでにも時間がかかります。

人はどうしても、成果が出やすい場所に戻りたくなります。
自分が役に立っていると感じられる場所に戻りたくなります。

だから、優秀社員を新規事業に当てるときには、注意が必要なのです。

4.「何において優秀なのか」を見誤ってはいけない


今回のケースで、いちばん大きなポイントはここでした。

その社員は、たしかに優秀でした。
でも、どんな分野で優秀だったのかを見極める必要がありました。

彼が得意だったのは、現場を回すことです。
 ・既存業務を安定して運用する
 ・トラブルに素早く対応する
 ・関係者に的確に指示する
 ・現場の流れを止めない
 ・目の前の問題を解決する
こうした力において、とても優秀でした。

でも、新規事業の企画や計画づくりは、まったく別の能力です。
 ・市場を読む
 ・顧客を想像する
 ・価値を言語化する
 ・仮説を立てる
 ・検証方法を考える
 ・事業全体の構造を描く
 ・先が見えない中で進める
これは、運用能力とは違う力です。

もちろん、現場を回す力が不要という意味ではありません。
むしろ、事業が動き出した後にはとても大切です。

でも、立ち上げ初期には「既にあるものを回す力」よりも、「まだないものを形にする力」が求められます。

ここを混同してしまうと、
 「優秀な社員を選んだはずなのに、なぜ進まないのか」
ということが起きてしまいます。

本人からすると、これもつらいです。

今まで成果を出してきたのに、新しい仕事では成果が出ない。
社長から期待されているのに、うまく応えられない。
自分でも何をすればいいか分からない。

これは、本人の能力が低いのではありません。
求められている能力の種類が違ったということです。

ここを経営者は、丁寧に見てあげる必要があると思います。

5.同じ事務所、同じ机では、新規事業に集中できない


もう一つの大きな原因は、環境でした。

その社員は、新規事業を担当することになっても、同じ事務所にいました。
机も同じです。
周囲には、元の仕事のメンバーがいます。
元の担当業務の状況も見えます。
電話も聞こえます。
相談も来ます。

これでは、切り替えが難しいです。

新規事業を立ち上げるには、ある意味で「別世界」を作る必要があります。

同じ場所にいると、どうしても既存事業の重力に引っ張られます。

目の前で困っている人がいる。
自分なら解決できる。
しかも、自分が関われば早い。

そうなると、手を出してしまいます。

そして周囲も、つい頼ってしまいます。

「ちょっとだけお願いします」
「今回だけ見てください」
「判断だけください」

でも、その「ちょっとだけ」が積み重なると、新規事業の時間はどんどん削られていきます。

新規事業は、まとまった思考時間が必要です。
ぼんやり考える時間も必要です。
情報を集め、仮説を組み立て、また壊し、もう一度考える時間が必要です。

細切れの時間だけでは、なかなか進みません。

ですから、新規事業を本気で立ち上げるなら、物理的にも心理的にも、既存事業から距離を取ることが大切です。

別の住所に事務所を構える。
少なくとも席を離す。
既存業務の相談窓口から外す。
元の職場が気軽に頼れない状態を作る。

これは冷たいことではありません。
むしろ、新規事業担当者を守るために必要なことです。

6.組織が柔らかい会社ほど、注意が必要です


この会社には、もう一つ特徴がありました。

服装も自由、紙の色も自由、アクセサリーもOK。
サーファーが集まって、自由に働いているという感じの会社でした。
3桁くらいのショップに若者向け商品を卸している自由な会社でした。

それは、しっかり固まった組織というよりも、柔らかく動ける会社だったことです。

誰かが困っていたら、自然に助け合う。
役割がきっちり分かれているというより、できる人が動く。
それが従業員にとっての働きやすさにもなっていました。

これは、とても良い面があります。

中小企業では特に、こういう柔軟さが強みになることも多いです。
部門の壁が低く、スピード感もあります。
人間関係が近く、助け合いも生まれます。

でも、新規事業の立ち上げにおいては、この柔らかさが裏目に出ることがあります。

なぜなら、役割の境界線があいまいだと、新規事業担当者が既存事業に戻されやすいからです。
 「得意分野でしょ、ちょっと見て」
 「分かる人がいないから、助けて」
 「社内のことだから、協力して」
こうした依頼を断るのは、本人にとっても難しいです。

特に責任感が強い人ほど、断れません。
優秀な人ほど、助けに行ってしまいます。

だからこそ、経営者が意図的に線を引く必要があります。

「この人は、今は新規事業に集中する人です」
「既存事業の相談は、別の人にしてください」
「困っても、元の担当者に戻さないでください」

そう宣言しないと、現場は今まで通りに動いてしまいます。

新規事業は、気合いだけでは立ち上がりません。
集中できる環境を設計することが必要なんですよね。


結局、別事務所で新しい人を採用することになった


この体験を通じて、その会社では方向転換することになりました。

既存事業で活躍している社員を無理に新規事業へ引っ張るのではなく、
別事務所で、新しい人を採用して進めよう
という判断になりました。

これは、とても大事な決断だったと思います。

新規事業を既存事業の片手間にしない。
既存事業の延長にしない。
既存の人間関係や役割に引きずられない。

そのために、場所も人も切り分ける。

もちろん、外から人を採用すれば必ずうまくいく、というわけではありません。
別事務所を作れば成功する、という単純な話でもありません。

でも、少なくとも新規事業に集中できる環境は作れます。

既存事業のトラブルに毎日引っ張られる状態よりは、はるかに前に進みやすくなります。

新規事業は、最初の環境設計がとても重要です。

誰に任せるか。
どこでやるか。
既存事業との関係をどうするか。
どこまで権限を与えるか。
どのくらいの時間軸で見るか。

これらをあいまいにしたまま始めると、結局、日常業務に飲み込まれてしまいます。



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