【今回のテーマ】
新規事業の立上げに、落ちこぼれ社員を当てると..
というお話です。
新規事業を立ち上げたい。でも、誰に任せればいいのか分からない。
そんな悩みを抱えている経営者の方は、きっと少なくないと思います。
「今いる社員の中から選ぶべきか」
「少し手が空いている人に任せるべきか」
「本業で成果が出にくくなった社員に、新しい役割を与えるべきか」
この判断は、とても難しいです。
人の人生も、会社の未来も関わってくるからです。
今日は、私自身があるソフト会社の社長との仕事を通じて学んだ、
新規事業の立ち上げに誰を当てるべきかという話をしてみたいと思います。
1.新規事業の相談から始まった話
あるとき、40人ほどの社員を派遣しているソフト会社の社長から、仕事の依頼がありました。
内容は、新規事業についての相談です。
社長の中には、すでにアイデアがありました。
ただ、それをどう形にしていくか、
どう事業として実現していくかを一緒に考えてほしい、という依頼でした。
そこで私は、社長と打ち合わせを始めました。
「どんな事業にしたいのか」
「誰に届けるサービスなのか」
「どうやって収益化するのか」
そんな話を進めている中で、社長がふと、こんなことを言いました。
「やっぱり会社は人材だよな?」
この一言から、話の流れが変わりました。
新規事業の話はいったん横に置かれ、社員研修のためのチェックリストを作る仕事に変わったのです。
https://note.com/joyous_sedum928/n/n15dcb2492548
今振り返ると、この仕事は私にとって大きな転機のひとつでした。
事業を考える前に、人をどう育てるか。
会社にとって本当に大切なものは何か。
そのことを深く考えるきっかけになったんですよね。
2.「この人に任せよう」と社長は考えていた
社員研修のチェックリストが一段落したあと、改めて新規事業の立ち上げの話が再開しました。
事業の概要を詰めていく中で、社長からこんな話が出ました。
「責任を持って進めてくれる担当者を入れて、3人で打ち合わせを進めよう」
それは、とても自然な流れでした。
新規事業は、社長と外部の人間だけで進めるものではありません。
実際に社内で動く人が必要です。
そして社長の頭の中には、最初から候補者がいたようでした。
その人は、40代少し前くらいの社員でした。
SEとしては、社長から見て期待しづらくなっていた人です。
今の感覚では少し乱暴に聞こえるかもしれませんが、
当時は「プログラマー35歳定年説」のような言葉がありました。
技術者として第一線に立ち続けるのは難しい。
年齢が上がると、だんだん現場での評価が厳しくなる。
そんな空気が、業界の中にあった時代です。
社長としては、彼に物足りなさを感じていたのだと思います。
でも同時に、冷たく切り捨てようとしていたわけではありません。
年齢が上がっても、社員として働き続けてもらいたい。
別の形で力を発揮してほしい。
そんな親心のようなものも、そこにはあったように思います。
ただ、結果から言うと、彼はすぐに辞めてしまいました。
3.新規事業は「救済ポジション」ではない
彼がなぜ辞めたのか。
本人から直接、すべてを聞いたわけではありません。
でも、私にはこう感じられました。
「仕事ができなくなったから、よく分からない仕事に回された」
「自分はまだできる」
「これは期待ではなく、左遷なのではないか」
彼は、そんなふうに受け取ったのではないかと思います。
ここに、新規事業の難しさがあります。
会社側としては、善意だったのかもしれません。
「新しい役割を与えたい」
「もう一度活躍してほしい」
「この人なら、社内のことも分かっているし任せられる」
そう考えたのかもしれません。
でも、任された本人がそれをどう受け取るかは別問題です。
特に、既存業務で評価が下がっている人に新規事業を任せると、本人の中ではこう見えやすくなります。
「自分は本流から外された」
これは、とてもつらい受け止め方です。
そして、その気持ちのまま新規事業に向き合うのは、かなり難しいです。
新規事業は、会社の余った時間でやるものではありません。
落ちこぼれ社員の受け皿でもありません。
ましてや、評価に困った社員の配置転換先でもないのです。
新規事業は、まだ何もない場所に道をつくる仕事です。
正解がありません。
失敗も多いです。
社内からの理解も得にくいです。
売上もすぐには立ちません。
だからこそ、そこには強い意志と、自分で切り開く覚悟が必要になります。
「期待されている」と思える人でなければ、なかなか走り続けられないんですよね。
4.既存社員を当てることの難しさ
もちろん、今いる社員が新規事業に向いていない、という話ではありません。
社内をよく知っている人には、大きな強みがあります。
・会社の文化が分かっている
・既存のお客様を知っている
・社内の人間関係を把握している
・経営者の考え方を理解している
・既存事業との接点を作りやすい
こうしたメリットは確かにあります。
ただし、既存社員を新規事業に当てるときには、注意が必要です。
その人が本当に新規事業をやりたいのか。
その人の強みは、新しい事業づくりに合っているのか。
本人は「期待されている」と感じているのか。
それとも「外された」と感じているのか。
ここを見誤ると、せっかくの配置が逆効果になります。
新規事業は、都合のよい異動先ではありません。
むしろ、会社の中でもっとも不確実で、もっとも精神的に負荷の高い仕事です。
だから、人選には慎重さが必要です。
5.新規事業には「新しく採用する」という選択肢がある
この体験から、私はひとつのことを学びました。
まったくの新規事業を立ち上げるときは、今いる社員ではなく、新しく採用することを考えたほうがいい。
もちろん、すべてのケースでそうだとは言いません。
しかし、新規事業の性質を考えると、新しく採用した人のほうが向いている場面は多いです。
なぜなら、新しく入る人は、最初からその事業のために来るからです。
「自分はこの新規事業をやるために採用された」
「会社はこの事業に期待している」
「自分の役割はここにある」
そう認識できます。
これは、とても大きな違いです。
既存社員の場合、どうしても過去の評価や社内での立場がついて回ります。
本人も周囲も、過去の延長で見てしまいます。
でも、新しく採用された人は違います。
最初から新規事業担当として入ってくるため、役割が明確です。
社内に対しても説明しやすいです。
「この人は、新規事業を進めるために入社した人です」
この一言があるだけで、社内の見え方も変わります。
新規事業では、実力だけでなく、**立場のつくり方**がとても大事なんですよね。
まとめ:新規事業の人選を間違えると、善意が裏目に出る
新規事業の立ち上げに、落ちこぼれ社員を当てる。
一見すると、悪い判断ではないように見えることがあります。
本人に新しいチャンスを与えられる。
会社としても人材を活かせる。
経営者としても、社員を見捨てずに済む。
でも、実際にはその配置が、本人を傷つけることもあります。
そして、新規事業そのものの芽を摘んでしまうこともあります。
私がこの体験から学んだのは、次のことです。
・新規事業は、余った人材で進めるものではない
・本人が「期待」と感じられる人選が必要
・既存社員を当てるなら、本人の意思確認が欠かせない
・まったくの新規事業なら、新規採用も有力な選択肢
・担当者ひとりに背負わせず、会社として支える必要がある
新規事業は、会社の未来をつくる仕事です。
だからこそ、誰に任せるかで、その後の景色が大きく変わります。
人を大切にすることと、事業を成功させること。
この二つは、対立するものではありません。
ただし、順番を間違えると、善意が重荷になってしまいます。
新規事業を任せるなら、まずその人が胸を張ってこう思える状態をつくることです。
「自分は外されたのではなく、期待されてここにいる」
この感覚があるかどうか。
それが、新規事業の最初の一歩を支える、とても大切な土台なんですよね。
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