「新規のお客さんを増やしたい。でも、どこに声をかければいいのかわからない」
個人で仕事をしている方や、小さな会社を経営している方なら、一度はこんな悩みにぶつかったことがあるのではないでしょうか。紹介だけに頼るのも不安ですし、飛び込み営業はハードルが高い。かといって、何もしなければ仕事は増えない。
私も、まさにそんな状況に追い込まれたことがあります。
バブル崩壊のあと、世の中の空気が一気に変わりました。ソフト会社が次々と倒産し、フリーのSEだった私にも仕事が回ってこなくなったのです。開発案件は減っているのに、仕事を求めるSEだけは街にあふれている。
「……どうしよう」
当時の私は、本気で途方に暮れていました。でも、じっと待っていても状況は変わりません。そこで私は、発想を変えることにしました。
“仕事をもらう側”ではなく、“仕事を創る側”になろう、と。
問題は「誰に売るのか」でした
提案営業をやってみよう。
そう決めたものの、すぐに壁にぶつかりました。
「で、誰に売るのか?」
「どうやって新しい会社と出会うのか?」
これが一番の問題だったんです。
そんなことを考えながら東京から帰ってくる途中、東京駅の売店で、たまたま目に入った雑誌がありました。
リクルートが発行していた転職情報誌の「B-ing」です。
普通に考えれば、転職先を探すための雑誌です。求人を見る人は「どこか良い会社はないかな」と
考えてページをめくりますよね。
でもそのときの私は、少し違う見方をしました。
「これは、会社が困っていることの一覧表なんじゃないか」
そう思ったんです。
求人広告には、その会社が欲しがっている人材が載っています。
つまり裏を返せば、その会社には「今、足りていない機能」があるということです。
そこに外注として入り込めないか。そう考えました。
社員ではなく「外注としてやらせてください」
私が目をつけたのは、「提案営業ができる人」を募集している会社でした。
普通なら、その求人に応募する人は社員として面接を受けるわけです。
でも私は社員になりたいわけではありません。
フリーのSEとして、提案書を作ったり、システム開発の入口を作ったりする仕事がしたかったのです。
そこで考えたのが、こんな売込み方でした。
「社員としてではなく、外注として提案営業を手伝わせてもらえませんか?」
今思えば、かなり変化球です。
求人広告を見て、そこに外注として応募するわけですから、相手からすれば少し不思議な話だったと思います。
でも、背に腹は代えられませんでした。
仕事がないのです。待っているだけでは何も起きない。
だったら、少しでも可能性がありそうなところに、自分から声をかけるしかありません。
当時の営業は、電話と郵送が中心でした
今なら、メールでPDFを送って「ご確認ください」で済むかもしれません。
資料もPowerPointやCanvaで簡単に作れますし、オンライン商談も当たり前になりました。
でも当時は違いました。
営業の中心は電話です。
PDFなんて一般的ではありませんし、資料をきれいに図解できるソフトも限られていました。
私が使っていたのは、Macの「インスピレーション」という、少しマニアックなソフトでした。
そもそもWindowsも普及しておらず、DOS/V機が主流だった時代です。
だから私は、まず提案書を作って郵送しました。
そして、相手に届いたころを見計らって電話を入れる。そんな流れでアプローチしたのです。
いきなり電話だけをしても、何を言っているのかわかりにくい。
だから先に資料を送る。相手が資料を見たタイミングで電話する。
今でいうところの、資料送付後のフォローコールですね。
やっていることはアナログですが、考え方は今でも通用すると思います。
2社に送ったら、2社ともアポが取れました
まずは試しに、提案書を作れる営業マンを募集していた会社を2社選びました。
そこに資料を送り、届いたころに電話をしました。
すると、なんと。
2社とも、翌週にアポイントが取れたのです。
電話を切ったあと、思わず「おお?!」と声が出ました。
正直、ダメもとでしたから、これは本当にうれしかったです。
もちろん、今振り返ればビギナーズラックだったのかもしれません。
でも、行動していなければ、その偶然すら起きなかったわけです。
このとき強く感じたのは、「売込み先は、意外なところにある」ということでした。
みんなが同じ見方をしている媒体でも、見方を変えれば営業リストになる。
そこに気づけたのは、大きかったんですよね。
社長の一言で、仕事の入口ができました
2社とも反応は好意的でしたが、特に印象に残っている会社があります。
80人くらいのソフト会社でした。半数は派遣で客先常駐、もう半数は社内開発という体制です。
その会社の社長さんが、私にこう言ってくれました。
「池田さんのような仕事、考えたことがあるんだよ」
この一言で、話が一気に前に進みました。
「提案書を担当してもらおう」という流れになり、営業部長と技術部長まで紹介してもらえました。
そして社長さんから、
「次回は、その2人と具体的に打ち合わせして」
と言われたのです。
その瞬間、心の中でガッツポーズをしました。
仕事がない。お客さんがいない。どうしよう。
そんな状態から、自分で仕事の入口を作ることができたのです。
そして驚くことに、その会社とはその後、20年のお付き合いになりました。
まとめ:新規顧客は「探し方」を変えると見つかります
この経験から学んだことは、とてもシンプルです。
新規顧客は、必ずしも営業リストの中だけにいるわけではありません。
転職情報誌のような、一見すると営業とは関係なさそうな場所にも、会社の困りごとは載っています。
求人広告とは、「うちにはこの役割が足りません」というメッセージでもあります。
そこに対して、自分が外注として役に立てる形を提案する。これが、当時の私にとっての突破口でした。
要するに、
「欲しい人を探し、その役割を外注として提案する」
ということだったんです。
新規顧客を増やすには、特別な営業テクニックよりも、まずは見方を変えることが大切なのかもしれません。
いつも見ている情報の中に、実は仕事の入口が隠れていることがあります。
次回は、その営業部長・技術部長との打ち合わせで何が起きたのか。
そのあたりを書いてみようと思います。
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