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どんなことから、今の図解思考に行きついたのか、思い出話を踏まえて書いていこうと思います。

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0054初めての「知のシート」作成  


【今回のテーマ】
初めての「知のシート」:コミュニケーションのブーメラン構造
というお話です。

お客さんの言った通りに仕事をしたはずなのに、最後に「違う!」と言われてしまった。
そんな経験、ありませんか?

一生懸命に話を聞いた。
メモも取った。
議事録にも残した。
確認もした。

それなのに、できあがったものを見せた瞬間に、相手の表情が曇る。

「うーん、違うんだよね」
「そういう意味じゃなかったんだよ」
「たしかにそう言ったけど、そこは察してほしかった」

こう言われると、こちらとしては困ってしまいますよね。

「え、でも言いましたよね?」
「議事録にも書いてありますよね?」
「確認もしましたよね?」

そう言いたくなる気持ちは、とてもよくわかります。
でも、不思議なことに、仕事の現場ではこういうことが何度も起こります。

そして、この「違う!」は、単なる聞き間違いや記録漏れだけで起こるものではないんです。
もっと深いところに、コミュニケーションそのものの構造的なズレがあるんですよね。

今回は、そんなズレを見える化するために生まれた、初めての「知のシート」とも言える図解、
「コミュニケーションのブーメラン構造」について書いてみたいと思います。

1.言われた通りに作ったのに「違う」と言われる不思議


私は、平成元年に上流工程専門のフリーのSEになりました。

上流工程というのは、システムを作る前の大事な段階です。
お客様のところへ行き、これからどんなシステムを導入したいのかを聞きます。

たとえば、こんなことです。
 ・どんなシステムを考えているのか
 ・どんな問題を解決したくてシステムを入れるのか
 ・どんな機能があったら便利なのか
 ・今の業務で何に困っているのか
 ・導入後にどんな状態になっていたいのか
当時の私は、几帳面で一生懸命でした。

お客様の言葉を一言一句聞き漏らさないように、メモを取りました。
打ち合わせが終われば、議事録にまとめました。
あとで「言った・言わない」にならないように、できるだけ丁寧に記録しました。

そして、その内容をもとに、設計をします。
プログラマーと一緒にシステムを開発します。
お客様から聞いた要望を、できる限り100%満たすように形にしていきます。

ところが、導入テストの場面で、こう言われるのです。

「違う!」

「え??」です。

打ち合わせに出ていなかった要求が出てきます。
以前の打ち合わせ内容と矛盾することを言われます。
「こうしてほしい」と言われた通りに作った部分が、「そこはそうじゃない」と言われます。

でも、こちらには議事録があります。
 「ここに、こう書いてあります」
 「このとき、こう確認しました」
 「この内容で進めると合意しましたよね」

そう伝えると、お客様はこう言います。
 「そうは言ったけど、池田さん、違うんだよ」
この言葉、なかなか重いですよね。

論理的にはこちらが正しい。
記録もある。
確認もしている。

でも、相手の中では「違う」になっている。

ここに、コミュニケーションの難しさがあります。

2.議事録に押印しても「違う」はなくならない


こういう経験を何度もすると、こちらも対策を考えます。

打ち合わせ中に、
「ここは後で変更になりそうだな」
「この部分は重要だな」
「ここで曖昧にしておくと危ないな」
と感じるところがあります。

そういう部分については、
 ・日を変えて
 ・表現方法を変えて
 ・この方が、良いのでは?
と、3回確認して事録にしっかり書きます。

「ここは重要ですから、後で変更できません」
「この内容で確定します」
「変更がある場合は追加費用が発生します」
場合によっては、そこに押印してもらうこともありました。

今思えば、かなり慎重にやっていたと思います。
でも、それでも「違う!」は出てくるんです。

つまり、問題は単純に
「記録していなかったから」
「確認していなかったから」
だけではなかったということです。

もちろん、記録や確認は大切です。
でも、それだけでは防げないズレがあります。

なぜなら、コミュニケーションは、言葉を渡したら終わりではないからです。

3.コミュニケーションは「伝える」だけでは完結しない


多くの場合、私たちはコミュニケーションをこう考えがちです。
 「ちゃんと言った」
 「ちゃんと説明した」
 「ちゃんと資料に書いた」
だから、相手は理解してくれるはずだ。
だから、相手は期待通りに動いてくれるはずだ。

でも、実際にはそう簡単ではありません。

発信者である自分には、自分なりの「考え・想い」があります。
相手にこうしてほしい、こう動いてほしい、こういう結果を出してほしい、という期待があります。

そして、それを言葉にして伝えます。

しかし、受信者はその言葉を、自分の経験や知識や立場を通して聞きます。
聞いた内容を、自分なりに理解します。
そして、その理解にもとづいて行動します。

その行動の結果として、何かが生まれます。

ここで初めて、発信者は気づくのです。
 「あれ、思っていた結果と違う」
 「期待していた成果になっていない」
 「そんなふうに受け取られていたのか」
つまり、コミュニケーションとは、
発信者の考えや想いが、相手の行動を通じて結果として返ってくる流れなのです。

これが、まるでブーメランのようなんですよね。

コミュニケーションのブーメラン構造


4.「考え・想い」と「成果」は同じではない


ここでとても大切なのは、
考え・想い ≠ 成果
だということです。

自分の中にある考えや想いは、そのまま成果になるわけではありません。

たとえば、発信者がこう思っていたとします。
 「このシステムで、現場の入力作業を楽にしたい」
 「ミスを減らして、確認作業を少なくしたい」
 「担当者が迷わず操作できるようにしたい」
でも、それを打ち合わせの場で、こう表現したとします。

「入力項目を増やして、情報をきちんと管理できるようにしたい」

受信者であるSEは、その言葉を聞いて、
「入力項目を増やせばいいんだな」
と理解するかもしれません。

そして、細かい入力欄をたくさん作ります。

結果として、情報は管理しやすくなるかもしれません。
でも、現場の入力作業は増えてしまいます。
使いにくくなります。
担当者は面倒だと感じます。

すると、お客様は言います。
 「違う。こういうことじゃなかった」
ここで起きているのは、単なる仕様の間違いではありません。

発信者の本当の期待は「現場を楽にすること」だった。
でも、言葉として表に出たのは「入力項目を増やすこと」だった。
受信者はその言葉を受け取り、理解し、行動した。
その結果、期待とは違う成果が返ってきた。

これが、コミュニケーションのブーメラン構造です。

5.構造で見ると、相手を責めなくてすむ


コミュニケーションがうまくいかないとき、私たちはつい相手を責めたくなります。

「なんで理解してくれないんだろう」
「ちゃんと聞いていなかったのかな」
「言った通りにやってくれればいいのに」

逆に、相手から責められることもあります。

「なんでそう作ったの?」
「そんなこと頼んでいないよ」
「もっとわかってくれると思っていた」

でも、コミュニケーションを構造で見ると、少し冷静になれます。

これは誰が悪いかの話ではなく、
どこでズレが生まれたのかの話なのです。

発信の段階なのか。
受信の段階なのか。
理解の段階なのか。
行動の段階なのか。
結果の確認の段階なのか。

そこを見られるようになると、対策が変わります。

「相手が悪い」ではなく、
「期待をもう少し具体化しよう」
「成果のイメージを先に確認しよう」
「言葉だけでなく図にしてみよう」
「途中で小さく確認しよう」
「行動に移す前に理解をすり合わせよう」

こう考えられるようになります。

これが、構造で理解することの力です。

最後に:初めての「知のシート」は、未来の自分への贈り物だった


この「コミュニケーションのブーメラン構造」の図解は、そうした経験の中から生まれました。

当時は、これをたくさん書きためて体系化しようとか、ノウハウ集にしようとか、
そこまで明確に考えていたわけではありません。

ただ、現場で何度も同じような問題に出会い、
「これはどういうことなんだろう?」
「どういう構造で発生しているんだろう?」
と考えました。

そして、それを図にして書き出しました。

今振り返ると、それが初めての「知のシート」だったのだと思います。

「知のシート」とは、自分の経験から得た気づきやノウハウを、あとで使える形にして残しておくものです。

ただの日記ではありません。
ただのメモでもありません。
自分が悩み、考え、現場で試し、そこから見つけた構造を残しておくものです。

そのときは小さな一枚でも、未来の自分を助けてくれます。

「あのとき、こう考えたんだ」
「この問題は、前にも似た構造で起きていたな」
「この図を使えば、お客様にも説明できるな」

そんなふうに、経験が再利用できる知恵になります。


この数年後、広野先生との出会いがありました。
そこで「知のシート」という言葉と出会います。

その言葉に触れたことで、自分のノウハウを意識して蓄積していこうと思うようになりました。

それまでも、現場で考えたことを書き出してはいました。
でも、「これは未来に役立つ知になる」と意識することで、書く意味が変わったのです。





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